qaaaaaaaの雑雑雑ブログ

ふにゃふにゃふにゃふにゃ……

ソローキンの氷三部作感想

 五年近く積んでいたソローキンの氷三部作を最近読んだ。かなり面白かった。昔、同じ作者の「親衛隊士の日」を読んで、ロシア的な陰謀に満ちた世界観や秘密組織の描写のクールさに唸ったものだが氷三部作でもそういったセンスは健在だった。
 では、どうしてこんなに面白い本を五年間も積んでいたのかと言うと、それは一巻がかなりとっつきにくいからです。まじでとっつきずらい、話のキモとなる部分が出てくるまで延々と隕石の話や、シベリアのタイガの描写が続き、五年前の私はすっかりまいっちまったわけです。今から読む人は、一巻を一旦迂回して二巻から始めてしまうのも手だと思う。金髪碧眼の人間だけを片っ端から誘拐して氷のハンマーでシバいて回る謎の集団というのは、シベリアの風景よりも興味を維持しやすい(個人の感想ですが)。ただ、二巻から始めてしまうと一巻をどのタイミングで読めばいいのかと問題が新たに発生してしまうので、やっぱり一巻から読んだ方が良い気がしてきた。一巻もとっつきにくいだけで面白くないわけではない。隕石にたどり着いてからの後半部分は普通に面白い。チェキストとかルビャンカとか出て来るし。こういう単語が出て来るだけで何となく嬉しくなる。
 氷三部作の主要な題材の一つにはグノーシス主義みたいなものがあり、それに伴って神秘主義的な体験への言及もあるのだがこれは意図的に紋切型的な物として、距離を置いて描写されていたように思う。というか、小説全体で光の兄弟団に対して距離を置く工夫が凝らされていて、それは物語への結末と相まって、作者の、世界への内在という話題に対する態度が現れていたように思え、大変面白かった。
 結びのやり取りを今、思い起こすとそこにはまさにヨブ記的なサムシングや、みなしごであることを笑おうとする姿勢的なサムシングがあった気がするのだが、私はここ最近、何を見てもヨブ記と騒ぎ出す病気にかかっているので自分を信用できない(なんて悲惨な病気だ!)。
 「ヨブ記」と鳴く鳥に生まれ変わって人々を不安に陥れたい……。