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ふにゃふにゃふにゃふにゃ……

「ザ・ビースト」感想(ネタばれ注意!)

 今、一番来ている映画俳優はニコラス・ケイジだ。その事は「マンディ 地獄のロードウォーリアー」や、今回取り扱う「ザ・ビースト」を見れば解る。
 原題は「primal」で原初の、とかそういう感じの意味だと思う。
 「ザ・ビースト」の良い所の一つは、あらすじの時点でめちゃくちゃ面白そうな事だ。
 主人公フランクは野生動物を捕まえて動物園に売ることを生業とするハンターなのだが、彼はある日、大変珍しい白豹を手に入れる。早速、白豹を国外に持ち出すために船へ載せるのだが、そこで不幸にも、囚われの殺人鬼ラフラーと乗り合わせる。港を離れた途端、案の定ラフラーは自由になって、従って白豹も自由になり、船の中は混沌の坩堝になってしまう……
 こんな感じの粗筋です。めちゃくちゃ面白そうじゃないですか? そうなんですよ。この映画はすごく面白いんですよ。
 この粗筋から細かい事を気にしたら負け、って感じの内容を想像するかもしれないんですが、全編に渡ってすごく地に足の着いた演出がなされてるように私は感じました。殺人鬼ラフラーのキャラには結構説得力があって、物凄く頭の切れる奴だというのが一発で伝わって来る。
 ラフラーはまじで何考えてるか解んないタイプなんだけど、他人の心の機微にはかなり敏感なようにも見えた。特に、相手と戦っている最中、何かしらの切っ掛けで生まれる敵意の空白のようなものを決して見逃さないし、毎回、そこに上手くつけ込んでピンチを脱していた。
 ラフラー以外の登場人物もすごく魅力的で船員のおっちゃん達なんかもめちゃかっこいい見せ場が用意されている。この映画のうまい所は登場人物を安易に英雄にしないところだ。そのおかげで、後からかっこよかったシーンを想い返したとき、そのシーンの魅力が何倍にも感じられるように私は思う。
 ところで、そろそろ、この映画で私に最も強烈な印象を残したシーンの話をしたい。
 この映画で最も強烈な印象を残したシーンにおいて、主役となったのは連邦検事のフリードという男だった。彼はラフラー護送部隊のメンバーだが、その職責はもっぱら事務や、責任者としてのそれで、ラフラーが自由に船内をうろつきまわっている状況で彼の果たすべき役割は無さそうだった。一応、彼もラフラーを捜索するチームに加わるのだが、ぎこちない手つきでアサルトライフルを扱う様子を見て、多分、殆どの人が彼が餌食に過ぎない存在だと思っただろう。
 実際にはそれは大間違いだった。映画の中盤、フリードと、ラファエルという護送部隊の隊員がラフラーに忍び寄ることに成功する。ラファエルは姿勢を低くして静かに狙いを定め、流石のラフラーも気付いていないのではどうしようもない。ところが、ラファエルの後ろに立ったフリードがナイフを抜き、彼の後頭部に深々突き刺したことによってラフラーは難を逃れる。
 フリードには独自の思惑があり、その為にもラフラーを殺される訳にはいかないのだった(その事が説明されるのは最終盤だし、大分おざなりで曖昧だ。重要でない、乃至、重要でないことが重要ですらあるのかもしれない)。
 ともかく、このシーンを切っ掛けに、ボウリングのピンでしかなかったフリードはプレイヤーに変わる(たとい、どんな最後が待ち受けているにしろ)。捕食者が被捕食者に、被捕食者が捕食者に目まぐるしく変じる様は大いに示唆的な物に感じた。
 強者と弱者を隔てる物の一つとして、意志の存在があるが、私はこれをあまり高く評価しない傾向にある。私の好みは決定論的な方向に流れがちだからだ(私はすごく怠惰な人間なので、その方が整合性が取りやすい。あるいは、諦念のような物が強く働いているからかもしれない)。
 だからか、今紹介した一幕のように、一人の人間の意志(言うまでもなく一人の人間の意志というのは混沌としたものだ)が威力を発揮してその不確実性を伝播させる場面、というのはやっぱり嬉しい。心が暖かくなる。
 そういう訳で、みんなも今年の冬、一番暖かくなれる映画「ザ・ビースト」を見て暖まって欲しい。マジで面白いから。
 そんじゃ、今日はこの辺で、おつquaaaaれー。